オネガイXXX


「なあ、来週の日曜日暇?よかったらウチ……きちゃう?
 他の家族全員ばぁちゃんちに行っててさ……ほら、次の日ハッピーマンデーじゃね?
 だから、みんなばあちゃんちに泊まってくるから……二人っきりで……お泊り、できるみたいな」


昼下がりの廊下で、出会い頭に新名が古並に問いかける。今や毎週のように行われる、
デートのお誘い。だけど、何時もと少しばかり違うのは、後に続く新名の言葉。
顔が上気しそうなのを必死で堪えながら、新名は思案顔の古並の様子を見守った。
しかし古並の口から発せられる言葉は、否。


「やめとくよ。みんなおばあちゃんちに行くんでしょ?旬平君もおばあちゃんちに
 行ったほうがいいんじゃない?」
「え、いや、ほら俺。予備校の全国模試あるじゃん。それ受けるからばあちゃんち行かないっていうか」
「……じゃあ旬平君暇じゃないんじゃ」
「模試三時には終わるし。その後俺んちだったら余裕で時間ありまくりじゃね?
 ……それよりアンタ、そんなに二人っきりでお泊りとかヤなの?
 カレンさんとかとはお泊り会やりまくりの癖に……」


古並がノリノリで話に乗ってくると思っていた新名は、明らかに乗り気ではない古並の表情に、
僅かばかり口を尖らせ拗ねた様子を見せた。しかし古並は、うーんと一つ声を漏らした後、
新名を真似るかのように僅かに口を尖らせて返事を返す。


「じゃあ、旬平君は……私が旬平君のお母さんに留守宅に勝手に上がりこんで、
 一晩泊まっちゃうようなフシダラな女の子だって思われてもいいんだ?」
「え、アンタがフシダラって?そんなこと思わねぇよ、うちの親!アンタ優しいし、
 すげー出来た子だって、母さん褒めてたし」
「でも、留守宅に勝手に上がりこんで、更に泊まっちゃうのって結構非常識だと思うよ?
 万が一、私がそんな風に思われても、旬平君は平気なのっていう話。私は……旬平君のご両親に、
 そういう風に思われるのやだよ」
「……俺の両親の、評判落としたくない?」
「勿論。だから、ごめんね?」


そう言って古並は優しく微笑むと、不意に背伸びをして新名の頭を軽く撫でた。拗ねた子供を諭すように、
優しく触れる。触れられた途端、新名の口の端が上がる。瞬時に俯いてなんとか我慢しようとしていたのに、
堪えきれずに笑みが漏れる。完全ににやけまくったこの表情見られたらやばい!そう思った新名は俯いたまま、
古並に問いかけた。


「なあ、やっぱ俺の両親の評判落としたくないってさ、アンタ結構未来の事考えてたりする?
 俺は……ちょっと考えてみたりするんだけど。どう考えたって、俺、アンタ以上他の女好きになるとは思えねぇし……
 俺、アンタがどう思っているかすげー知りてぇ……って、アンタ聞いてる!?」


新名が古並の反応が薄い事に気がつき、顔を上げてみると、古並は携帯を弄っていた。
そして、ひょいと液晶画面を新名に向けると満面の笑みをもらした。


「ねえ、映画の時間調べたら、模試のあとに丁度いいのがあるよ。ほら、みて。
 これ、旬平君が前に見たいって言ってたヤツだよね?」
「……なあ、俺の話聞いて……ないよなあ……もうヤダヤダ……」
「え、映画ダメ?」
「そ、そうじゃねぇし!もーーアンタには敵わない。映画行く……」


 ため息混じりにそう呟く新名に、古並は小首を傾げつつも小さく微笑むのだった。




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