新春企画 お蔵だし
#1 年末→年始
ねぇ。士郎。
なんだよ、遠坂。
今あんたが、魔術師として存在できるのは、誰のおかげ?
…。
ねぇ、衛宮君。誰の、おかげ?
…遠坂です。
肌を伝う指。
首筋を這う舌。
暖かい、彼女の体温。
彼女の、鼓動。
魔術師って、等価交換が基本でしょう?
ああ…そうだな。
だったら、たった一つだけ。私の願い、かなえて。
…願い?
絡む、指。
絡む、足。
絡む、唇。
絡み合って解けない。思考。意志。
だけど。
「遠坂!!ほんっとー無理!マジ勘弁。」
「つーかあんなに魔力提供してやったんだから、どうにかしなさいよ!!」
「いくらなんでも、俺の投影にも限度っつーか!!うわぁガント打つなよ!!」
新年早々の衛宮家では、年末ジャンボ宝くじの外れ籤と当選番号が書かれた新聞の切抜きを
片手に、涙ながらに当選宝くじの投影を試みる士郎と…鬼のような形相でそれが成功するまで
ガントを打ち続けそうな凛の姿がありましたとさ。
#2 御節もいいけど、○○○もね。
…君達は知っているだろうか。
御節料理とは、本来節会料理からきた語で、
本来は節供に供される料理であったことを。
現在では正月三が日間食べられるよう、
もちがよくさめてもよいものを用意するのだ。
「つーかよ、そんな薀蓄垂れるぐらいなら、オセチつーやつ
用意しろよ!!!!なんで今日もマーボなんだよ!!!」
「ふふふ。話を聞いていなかったのか、ランサー。
もちがよくて、さめにくいマーボーを開発したのだ。
まずは、ヤバイマーボLv5。既に発酵を通り越して腐敗の
域に達している。これ以上悪くなりようが無い。そして
次がフローズンマーボLv12。これはなんと冷凍…」
言峰の説明はまだまだ続くようであったが、既にランサーは
自らの意志で聴覚を切断した。大体、レベルってなんだ…
と突っ込むのもばかばかしい。既に金ぴかはマーボのキラー
スメルによって昇天してしまっている。
初詣はちょっと遠いけど、京都の縁切り神社にしよ。
つーかついでに契約も切れてくれねぇかなぁ…
ランサーは言峰の話に耳を傾けた振りをしながら
異邦の神に、そうお願いすることに決めたのだった。
#3 初詣、願掛け。
まずは、衣服の汚れを払い、一礼。鳥居をくぐる。
次に、手水で両の手、口を漱ぎ清める。
御祭神の通り道を邪魔しないように、参道の端を歩いた。
神殿の前に着くと、凛から与えられた小銭を賽銭箱へ
そっと投じる。順番を待って、鐘を鳴らし、二礼二拍手一礼。
そして、最後に願をかける。
願わくば、彼女が幸多き人生を送らんことを。
私などいなくなっても。彼女の笑みが曇らぬように。
アーチャーは瞼を閉じてそう願い…再度ゆっくりと目を開いた。
1月だから初詣とか行ってみたいとせがむ凛に押し切られ、
致し方がなく実体化して神社に来たアーチャーだったが、
いざ参拝すると思いのほか、真面目に参拝してしまった。
かつて人だったころ、『じーちゃん』に教えてもらった記憶が、
滲み出て来てしまったのかもしれない。
「あーら随分と熱心にお願いしてたじゃない。」
「まぁ、な。」
「ふーん。まぁ、アンタのお願いなんて、この私がかなえて
上げるわよ。無論、聖杯を手にして、ね。」
高らかに、宣言する、眩しいばかりの笑顔。
「ほほう。それは頼もしい。」
アーチャーは苦笑交じりに一言答えたあと、思うのだ。
聖杯なんぞなくっても、私の願いは既に叶えられているのだな…と。
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